真言宗豊山派宗務総長 大塚惠章
今般、アメリカ合衆国のブッシュ大統領は、イラク国のフセイン大統領と子息に対して国外退去を求める最後通告を行い、それをフセイン大統領が拒否した場合は武力行使する旨の表明をしました。
イラクへの査察期間の延長を求めていた国連監視検証査察委員会のメンバーも既に国外へ避難してしまいました。
今、世界の情勢は、強大な軍事力を背景とした大国の論理や自国のみの利益優先のかたくなな思想と徹底した排他主義が世界不安を喚起し、自国民や他国民を問わない一般民衆を死に至らしめる悲惨な紛争が惹起され、そして今まさに戦争が始まろうとしています。
我々仏教徒は、安寧な社会生活を築き、平和な日々を共生することを願い続けています。宗祖弘法大師は、曼荼羅思想を主張され、ともに仏国土実現に求道されました。
「非戦・非暴力」は主義や観念の範疇ではなく、仏教の立場でも当然の事であり、理屈のいらない、全ての善良な民衆共通の人類生存への自明の理であります。
去る2月14日、真言宗豊山派も加盟する「全日本仏教会」は、理事長名にて『日本仏教者の非戦・平和への願い』を表明いたしました。
共に尊い命を失うこととなる無力な市井の民衆の呻吟は、生命を守る「非戦」こそ、究極の祈りと願いであり、「世界平和」は積極的な生への標語であると信じます。
再び尊い命が失われ、すべての物が破壊される戦争が起こされないことを強く願うものであります。
平成15年3月18日
※本頁の肩書きは、寄稿いただいた当時のものです。