季刊誌『光明』

平成30年-秋-第209号



ひとひらのいのち


死を目前にしたら なにをする?



  「明日、世界が滅びるとしても、今日、私はリンゴの木を植える」
  宗教改革を指導した、マルティン・ルターの言葉である。
  歌人の寺山修司は『ポケットに名言を』(角川文庫)で、この言葉を引用し、作家の童門冬二は、座右の銘であるとして多くの作品で紹介している。芥川賞作家の開高健は、この言葉がお気に入りだったらしく、色紙を渡されると「私は」のところを「あなたは」や「君は」に変えて筆を走らせた。   命を語る言葉だから、心のきんせんに触れるのだろう。

  もしも明日、世界が滅びるとしたら……。つまり、今日が人生で最後の日になったら、いったいあなたは何をするだろうか。
  誰の目をはばかることなく、享楽的な一日を送るかもしれない。あるいは、ひたすら神仏に祈りを捧げるかもしれない。もしかすると、ぼうぜん自失となって、何もできない可能性だってある。
  さて、「今日が人生で最後の日かもしれない」という不安を、現実の問題としてかかえている人がいる。重い病におかされ、死期が迫っている人たちである。

  「がん哲学外来」を始めた順天堂大学のおきさんには、『明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい』(幻冬舎)の著書がある。ルターの言葉にヒントを得たタイトルであることは、いうまでもない。
  めぐみ在宅クリニックを開き、多くの患者をってきたざわたけとしさんは、『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』(アスコム)を出版した。。
  死を宣告された人たちと真剣に向き合う二人の医師は、ともに「今日」という日の大切さを説いている。

  小澤さんは、命が終わりかけたときこそ、生きてきた意味がわかる、という。死期が近づくと、多くの患者は、あることに気がつく。それは、家族・恋人・友だち・仕事・趣味といった本当に大切なものは、すべて身近なところにあった、という事実である。だから、死を目前にすると、自分の人生を肯定できるようになるらしい。
  樋野さんは、命が一番大事だと考えないほうがいい、とアドバイスする。命よりも大切なものを探し、そうして見つけた役割や使命を、最後の瞬間までまっとうすれば、死におびえる気持ちは小さくなるのだという。
  死が迫ってきたら、今日できることを、精一杯やるしかない。ルターがいう「リンゴの木を植える」とは、そうしたことを述べた言葉ではないだろうか。





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