季刊誌『光明』

平成31年-新春-第210号



仏道生きかた手帳



第11回
  ゴールは引き直してもいい

名取芳彦



  書店に並ぶ本を書かせてもらうようになって、5冊目くらいの本を書き終えた時、担当の女性編集者に「発売に間に合わせるために、夜も寝ないで昼寝して書きました」と、冗談とも愚痴ともつかないことをもらしました。


  すると彼女は驚いた顔をして言いました。


  「なんだ。それならそうと言ってくだされば良かったのに。
    いくらでもリスケできますよ」


  「リスケ?」


  「リ・スケジュールのことです。発売日を変更して、
    それに合わせて他のスケジュール全体を見直すことです」


  週刊誌や月刊誌などの定期刊行物では難しいそうですが、単行本などでリスケすることは日常茶飯事らしいのです。


  自分が書き終えないと次の作業をする人の負担になると思い、発売日というゴールに間に合わせようと必死になっていた私にとって、「ゴールは変更していい」という言葉はとても刺激的でした。



  私たちは「始めたことは最後までやる」「決めたことは最後までやり通す」など、自分でさまざまなゴールを設定します。


  苦労した末にゴールして得られる達成感や充実感は得がたいものですし、やりとげた成功体験は自信となり、人生を堂々と歩むための頼もしい杖になります。


  逆に、やり残したことや、放っておいたことがあれば、まだゴールしていないので、気持ちの整理がつかずモヤモヤした日々を過ごすことになります。


  しばらく連絡を取っていない人に手紙を書こうと思っているのに、忙しさに紛まぎれて書けないでいる。タンスや引き出しの中を整理しようと思っているのになかなか手がつけられない。好きで始めた手芸なのに、いくつか作品を作ったきりで、材料や道具をしばらくしまったままにしてある。これでは気分は晴れないでしょう。



  そんな時は思い切ってゴールラインを引き直すのです。


  長い手紙が書けないなら、電話でもハガキ一枚でも良しとします。タンスや引き出しが整理できないなら「タイムカプセルだと思って、このままにしておこう」と割りきってしまうのです。使わない手芸用品や材料は、思い切って処分します。


  モヤモヤした気分で過ごすのではなく、現状をゴールとしていったん清算してしまい、身も心もさっぱりさせるのです。


  ほかにも、やりとげることをゴールにしないで、あと三カ月で止める、今年一杯でケリをつける、何歳までやったら終わりにするなど、タイムリミットを設定するのもゴールの引き直しになります。それは悪いことではありません。


  自分が始めたことのゴールは、もともと自分が決めたゴールです。ゴールを目指して努力するのも大切ですが、やり残しの多い人生にしないために、時により、事により、ゴールを引き直してもいいのです。


仏道生きかた手帳掲載イメージ




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