季刊誌『光明』

平成29年-夏-第204号



高橋英樹の生きる原点



感謝の根っこ



  親は、愛情をもって子育てをしければいけません。でも、ときには本気で子どもを叱ることも必要です。
  私が少年のころは貧しい時代でしたから、食べ物を取り上げられるのが一番つらかった。親の言うことを聞くのは当たり前で、悪さをすれば家から閉め出されたものです。
  教師だった父は、家の中でも外でも厳しい人で、私が悪いことをすると「剣道の稽古けいこするぞ」と道場(※)に連れ出され、竹刀しないで叩かれました。「飯食うな、外に出ていろ!」と怒鳴られたこともあります。街灯ひとつない時代ですから、外の暗さに震え上がりました。だから、母が玄関を開けてくれたときの安堵感あんどかんは、いまでも忘れられません。
  当時は、家だけじゃなくて、学校でも怒号どごうが飛んでいました。誰かが悪さをすれば「止めなかったみんなも悪い」と連帯責任で怒られたものです。
  体罰はない方がいいに決まっていますが、子どものためを思って叱るのは、成長のために必要なことです。自分が嫌われ役になるのをいやがり、叱る親が少なくなったのではないでしょうか。

  子どもが悪さをするときは「悪いことをしている」と自分でわかっているものです。その裏には「僕のことをみてくれているかな」という気持ちがある。つまり、心のどこかでは怒られるのを望んでいます。
  ですから、叱るべきときに、それをしないと、子どもたちは無視されていると思ってしまう。叱ることは「ちゃんとみているんだよ」と言うのと同じなんです。
  今でも「あなたのお父さんには世話になった」と、父の教え子から言われることがあります。厳しく接してくれたからこそよく覚えているものなんでしょう。そうした人たちが口にするのは、恨みではなく、感謝なんです。

  木にたとえれば、私たちは「枝」にすぎません。大事なのは、幹や、根っこです。私にとっての「幹」は、叱ってくれた父であり、優しく接してくれた母です。その親を生んでくれた先祖は「根っこ」にあたるでしょう。常に支えてくれる幹や根っこへの感謝の気持ちは、忘れたくありません。
  親は、子へ命をつなぐだけではなく「いつも見守っているよ」という安心感を与える必要があります。安心感という種は、成長とともに芽を伸ばし、やがて感謝の花を咲かせるのです。



※当時の高橋氏の自宅は、父親の勤務先である学校の近くだったため、学校の道場がすぐそばにあった。




高橋 英樹
高校在学中の昭和36年5月、日活ニューフェース5期生として日活入社、『高原児』でデビュー。以後『激流に生きる男』『男の紋章』シリーズ、『けんかえれじい』『戦争と人間』『伊豆の踊り子』等、映画黄金時代に多数出演、活躍する。



一問一答コーナー
Q. 座右の銘は?
A. 「運は天にあり、勝は人にあり」です。良い結果というのは、運だけではなく、不断の努力の上にあると思っています。
Q. 好きな本は?
A. 好きな作家はたくさんいますが、司馬遼太郎さんの本に興味があります。日本の歴史観を変えた人ではないでしょうか。


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