季刊誌『光明』

平成30年-春-第207号



光明アカデミー



    「同行どうぎょう二人ににん」の現代いま

平井宥慶 真言宗豊山派総合研究院 前院長 大正大学名誉教授/東京 常泉院住職




  だいぶ前のことですが、『空海』という映画がありました。全真言宗青年部が一般商業映画会社と提携して、北大路きたおおじ欣也きんやという当代一流の俳優を配し、当時一大空海ブームを起こした映画界の当り作であったと記憶しています。欣也さんもこの映画のため得度とくどし、不動護摩法の伝授を受けたといいます。そういえばそういうシーンもありますからね。運転免許をほんとは持たぬ俳優が運転シーンを撮るのはまずい。なおこの映画製作に関わった当豊山派青年(当時!)諸氏も少なくなかったことを存じています。
  映画は、お大師さまの生涯に主要な挿話を要所に配し、かつ軽薄にはしらないように、と青年部側も制作上に加わったといいます。一部宗派人からは疑義のあるシーンもあったのですが、一般社会に興味あるようにと許容され上映されました。何しろ脚本が早坂はやさかあきらという方、この人が四国出身で小さいころからお遍路さんに接していたという生い立ちで、当時幾つも感動的人間ドラマを、映画にテレビに打っていました。私としては『夢千代日記』が今でも忘れられません。
  映画『空海』で忘れられない、私にはこの映画での“主張”とも思えるシーンがあります。ラストのエンドロールに重なるほどに、現代のお遍路行列が映ります。その行列の人と人との間を歩くもう一人の遍路人、画面ショットは望遠で捉えていますので、その人物はチラリちらりと映ります。それが今のお遍路姿の北大路欣也さん。ズバリ「同行二人」の映像です。現代の服装で映るのが秀逸の演出とみました。大師はどこでも“いつでも(時代を超えて)”私たちのかたわらに沿うててくれる、と主張するごとくです。
  このシーンは、この長編の映画のなかでも、最も肝心なところと考えます。もし無いとすると、映画全編、大師の足跡にはああいうことがあった、偉いだろう、と自慢たらたらだけの映画、大師はこういう人だから皆の衆覚えておけ、というようなプロパガンダ映画で終わってしまうように思えてなりませんが、どうでしょうか。極論すれば、このシーンのためにある映画とも思うのです。まさに「同行二人」を映像的に主張するところです。
  「同行二人」は信ずればそうだ、というものではありません。文化というものが永続的に伝承されてこそ私たちにとって意味あるものだ、ということを、お大師さまに即して言えば「同行二人」になる、ということです。事実“空海マンダラ文化”は現代の事象の考え方にまで多大の影響を及ぼしています。
  その“曼荼羅まんだら”という融和精神です。近時テレビには、お大師さまのこと、実によく映りますこと、みなさんもよく気付いておられますでしょう。東京にも八十八ヶ所札所がありますが、お参りの方、このごろよくおいでになります。一回ならず何度も参詣なさる人さえあります。その文化の永遠性に触れることが出来てこころいやされる、ということでしょう。「同行二人」は昔のことではないのです。





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