季刊誌『光明』

平成30年-夏-第208号



光明アカデミー



    灌頂かんじょう
            ― 師から弟子へ脈々と受け継がれる真言密教 ―

大塚伸夫(僧名:慈伸) 大正大学学長/千葉市 大日寺住職




  八〇五年の夏、真言宗を開いた弘法大師空海は中国唐代の都・長安にて、その後の人生を決定づける重要な儀式を受けました。この儀式を「灌頂」といいます。一説には、命がけで中国へ渡ったお大師さまの目的は、この「灌頂」という儀式を受けることであったともいわれています。
  青年時代のお大師さまは、厳しい修行を通じて、言葉では言い表すことのできない神秘的な体験をしました。その不思議な体験の答えを求めてたどり着いたのが長安のしょうりゅうでした。お大師さまは青龍寺を訪れ、インド伝来の正統な密教を継承するじゃ(密教の教えを授ける立場にある師僧)・けいしょうに教えを請いました。お大師さまの著作『 しょうらいもくろく』の記述によれば、恵果和尚は初対面のお大師さまに対し、次のように仰ったようです。
  「我われ、先より汝が来ることを知りて、相待つこと久し。今日、相見ること大いにし、大いに好し。報命きなんと欲すれども、ほうに人なし。必ずすべからく速やかに香花を弁じて灌頂壇に入るべし。」
  この一節より、恵果和尚がお大師さまのたくえつした資質をすぐに見抜き、灌頂の儀式を行う決意をしたと読み取れます。
  準備の整った八〇五年の六月初旬、お大師さまは初めて灌頂の儀式に臨みましたが、この時、たいぞうまんの中心に位置する大日如来とご縁を結びました。続く同年七月初旬、お大師さまは二度目の灌頂を授かりました。この時も、お大師さまはこんごうかい曼荼羅の中心に位置する大日如来とご縁を結びました。このような奇跡的な出来事を目の当たりにした恵果和尚は大いに驚き、さんたんしたと伝えられています。
   なお、この二度にわたる大日如来との結縁が契機となり、真言宗祖弘法大師に対し捧げられる「だいへんじょうこんごう」という御宝号が後に誕生しました。この御宝号の「遍照」とは、あまねく光明を放つ大日如来を指す言葉であり、かつ「遍照金剛」は、大日如来と結縁して授かったお大師さまご自身の灌頂名なのです。このことからも、お大師さまと真言密教の根本仏である大日如来との強い結びつきが感じられます。
  インドにおいて密教の灌頂の儀式が始まったのは、五~六世紀頃と考えられます。それ以来、密教の教えは師から弟子へ脈々と受け継がれており、今なお、真言宗の正式な僧侶となるには、この灌頂の儀式を受けることがひっとされています。
  昨今は、インターネットを通じて、顔の見えない人物から知識や情報を得る機会が非常に多いように思います。手軽で便利であることは言うまでもありませんが、時に注意を払うことも必要なようです。
このような時代にあっても、真言宗の大切な教えはたゆまず、変わることなく、師と弟子が相まみえて継承されているのです。



曼荼羅



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