季刊誌『光明』

平成30年-秋-第209号



光明アカデミー



    弘法大師と仏像

野口圭也  大正大学教授/豊島区 南蔵院住職




  今日、仏教と仏像は切っても切り離すことはできません。お寺の本堂には本尊さまの仏像がおまつりされ、多くの人々が仏像の拝観を通じて仏教に親しんでいます。しかし仏教の歴史の中で、仏像が造られるようになるまでには、数百年という長い歳月が必要でした。おしゃさまの姿を表わした仏像が初めて造られたのは、今から二千年ほど前の、西暦一世紀頃のことです。

  ひとたび仏像が造られると、仏教が広まったすべての国々で、それぞれの時代や地域に適合した仏像が造られ、また仏さまの姿が描かれるようになりました。仏教の興隆と文化の発展に仏像が果たした役割は、極めて大きいことは疑いありません。

  弘法大師も、自らが日本に伝えた真言密教の教えを理解するためには、仏像や仏画が欠かせないことを主張しておられます。

  大師は最新の密教を学んでとうからお帰りになり、持ち帰ったたくさんの経典や宝物のリストをちょうていに提出されました。それが『新しょうらいの経などの目録をたてまつる表』という文献で、一般には『しょうらいもくろく』と言われています。その中には多くの密教経典と並んで「仏像等」という項目があり、まんや密教の方の絵姿が列挙されています。その趣旨を大師は次の様に述べておられます。




趣旨


  (真理とは本来、色かたちを離れているのだが、色かたちを通してでないと、私たちはそれを悟ることはできない。密教の教えは深く微妙で、文章のみでは表現するのが難しいので、悟っていない者には図画によって教え示すのである。様々な形となって外に現れたふるまい、様々なしるしは、仏の大きなあわれみより出現したものなのだから、それをひとめ見れば成仏することができる。経典やちゅうしゃくでは秘密に省略して説かれているが、仏の姿かたちを表したぞうでは明らかに示されている。密教の教えの最も重要な部分は、まさしくここにあるのだ。)




  弘法大師は、密教の教えを表すのに、文章はもちろんですが、仏像や絵画も積極的に用いています。例えば、京都のとう講堂に配置された仏像群は、弘法大師のプランに基づいて構成されており、全体で密教的宇宙の調和の世界を表しています。その根底には、仏像や仏画は、仏さまが大きな慈悲に基づいて、本来は形を超えた密教の真理を形を通じて私たちに教え示して下さったものである、という、大師の仏像観があります。

  真言密教の仏像や仏画は、単に仏さまのお姿を美しい形で表わしたものではなく、密教の教えを表現した、悟りへと導く道しるべなのです。





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