真言宗豊山派の年中行事 -他-

大般若会 だいはんにゃえ

  大般若会は、仏典で最も大部の『大般若経』六百巻を読み上げる法要です。『大般若経』は、今から約1400年も昔、『西遊記』で有名な 玄奘 げんじょう 三蔵が歩いてインドに至り、お持ち帰りになって漢訳した、全部で六百巻もあるお経です。
  このお経は、森羅万象一切の存在が「 くう 」であることや、真理さえも「空」であることを説きます。同時に「空」であることをふまえて、最高の智慧を完成させること(=般若波羅蜜多)も説かれています。
  六百巻という大部の経典のため、実際に読誦するには長時間かかります。よって 転読 てんどく といって、 大音声 だいおんじょう で経題だけを読誦して、アコーディオンのように折本の経をくり広げます。多くの僧が一斉に転読するすがたは壮観で、除災招福や厄除けのご利益があるというのもうなづけることでしょう。
  弘法大師は、天長4年(827)に「大般若経典を転読して、天中の仏に供養す」(『性霊集』巻六)と述べられ、百僧を率いて大般若会を行われています。このお経を読誦すると、無上の功徳があり、法要に列席した人にはさまざまな加護があると言われています。このため、平安時代には皇室の行事になりました。現在では、総本山長谷寺や大本山護国寺をはじめ、各寺院で新春祈願の法要として修されています。



護摩 ごま

  密教独特の儀式に「護摩」があります。これは、光・炎・祈りが盛り込まれた、まことにすばらしい密教の行事です。「護摩」の語源は梵語の「ホーマ( homa )」からきたもので、「 く」という意味があります。もともとの形は、インド文化の発生以来、数千年にわたって行われてきた祈りの儀式にあるといいます。燃えさかる火に五穀や香木などをくべて、天上の神々に供養することを目的としていました。炎の光にはまことに不思議な力を感じます。また、何か聖なるもの・清らかなものを連想させる趣があります。このように、人間の本性に根ざした祈りの形が儀式となって続いてきたのでしょう。
  密教では護摩を仏道修行のすぐれた手段として取り入れました。インドの神々を供養するためではなく、あくまでも「ほとけさま」を供養するのを特徴としています。しかも単に火に供物をくべて供養するだけではなくて、深く精神的な境地が加えられているのです。火は仏さまの智慧の火であり、火は祈りを届け、煩悩を焼き尽くします。
  日本には弘法大師が伝え、その後、真言宗と天台宗が護摩を修行するようになりました。真言宗の護摩の作法は、相伝が許された修行者の、特別なものです。いつどこで行われるかは定めがありませんが、多くの真言宗寺院では決まった日や祭礼の時などに修されています。総本山長谷寺や大本山護国寺をはじめ、全国の豊山派寺院で修されていますので、もし不明であれば菩提寺にお尋ねください。